地震保険の概要
地震・噴火・津波による火災、建物の倒壊や埋没、津波による流出等の損害を補償するのが地震保険です。
マンションの管理組合が共用部分に対して火災保険に加入すると同じように、共用部分の地震保険も管理組合が火災保険とセットで加入します。
火災保険では補償の対象外
地震・噴火・津波による損害は、火災保険では補償の対象外となるため、たとえ地震が原因で火災が起きても、火災保険では補償されません。
こちらの動画で地震保険の簡単な説明がされています。
https://youtu.be/MLMpE2Vwghc
一般社団法人 日本損害保険協会より
また、地震による損害は保険会社の補償能力を大幅に上回る巨額なものとなる恐れがあることや、発生時期や発生頻度の予測が困難なことから、保険会社単独でリスクを追うことが難しい保険です。そこで、「地震保険に関する法律」に基づき、民間損害保険会社と政府が共同で保険責任を負担する制度となっています。
したがって地震保険の補償内容や保険料はどこの保険会社で加入しても同じです。
地震保険の必要性
一般的に、マンション管理組合では、共用部分の修繕に備え、修繕積立金を積み立てています。しかし、修繕積立金が十分に積みあがっていないときに地震が起こった場合、マンション居住者に新たな負担が生じる可能性があります。生活再建をスムーズに進めるためには、共用部分の地震保険が欠かせません。
地震保険金は地震の際のご負担を軽減
◆宮城県では、東日本大震災時に4分の3の管理組合が地震保険に加入しており、その9割で保険金を受領。
◆工事費用の資金調達方法の調査でも、修繕積立金と地震保険金が多数を占めた。
◆地震保険のみで復旧工事を行ったマンションも25%あった。
マンション管理支援ネットワークせんだい・みやぎ「仙台圏での復旧工事に関するアンケート調査」より
直近の地震でのマンションの被害状況
熊本地震(2016年4月)
熊本市内のマンション722棟のうち、32%は小破以上の損害を受けており、被害無しのマンションは4棟に1棟程度だったようです。
東京カンテイ プレスリリース 熊本地震マンション被害度調査報告 より引用
軽微:外見上ほとんど損傷無し
小破:タイル剥離、ひび割れ補修等が必要
中破:大規模な補強・補修が必要
大破以上:倒壊や建て替えが必要な致命的被害
地震保険の有無で変わる住民間の合意形成
東日本大震災での事例1
仙台市泉区の10階建ての分譲マンションでは、受水槽が壊れ、2〜5階を中心に外壁や廊下に大きなヒビが入った。管理組合理事長は臨時総会で区分所有者に頭を下げ、「大規模半壊」とされたマンション共用部分の修理費に持分に応じて65万〜85万円の負担を求めた。
1年も経つのに直さないままだと、下がった資産価値が戻らない。ご協力いただきたい。
が、ある所有者は大声で反対した。
8階はほとんど被害がない。同じ割合の負担は納得できない。
ある所有者は嘆く。普段ほとんど付き合いもないマンション住民がお金でまとまるのは難しい。災害に強い終の棲家と思って買ったのに。
宮城県マンション管理士会長は、
修繕積立金不足や地震保険に未加入のマンションでは修理費用を賄えないところが多いと話す。
平成24年6月2日 朝日新聞記事より引用
東日本大震災での事例2
全壊のような事態なら、自宅(専有)部分と共用部分の両方に入っていても、地震保険の金額だけでマンションが建て直せることは少ない。「それでも生活再建には大切」と言うのは全損認定を受けた仙台市内の大型マンションの管理組合理事長だった伊藤宗昭氏。共用部分の地震保険で1世帯当たり約270万円が支払われた。
建て直しはできなかったが、保険金の使途は共用部分の修復に限られていないため、新たに自宅を買った人が頭金の一部にするなど、あるとないとでは大違いだった
と話す。宮城県マンション管理士会の高橋悦子会長は、
東日本大震災での分譲マンションの修復は、管理組合が共用部分の地震保険に入っていたかどうかで大きく左右された
と指摘する。
日本経済新聞 2014/6/7 より引用
管理組合でよく話し合う必要性
地震保険の加入は、保険料、マンションの構造、立地、修繕積立金の積立額等、住民・管理組合の意向など、様々な要因を加味して決定すべきでしょう。
特に、修繕積立金が充分に溜まっていない、もしくは大規模修繕工事等の計画があり、修繕積立金が大幅に減る場合など、地震保険でリスクヘッジすることも有効であると思います。
国土交通省ハザードマップ
https://disaportal.gsi.go.jp/